田舎に泊まろう(四年)

オタクでありたい

はじめに

昔から、文を書く仕事に憧れていた。

 

本を読むことが好きだったということもあるが、自分の頭の中にある文豪のイメージ—古い洋館の一室でコーヒーを傍らに万年筆で原稿用紙を埋めていくような—は、私のイメージする、かっこいい大人そのものだった。

 

そのせいかずっと物が書きたかった。なんなら自分は書くことが得意だと思っていた。気まぐれで書いた文が人に褒められたという経験は、そう思い込むのに十分だった。しかし、自分を振り返ってみると、私はあまりに書いたことがなさすぎるということに気づいた。

いつか、自分は何かを書けると漠然と思っていた。でもそれを待っている限り、たぶん何も形にならないだろうなと悟った。一人暮らしを三ヵ月して、寂しくて死にそうな思いをしても、書こうという気が起こることはなかったからだ。

 

だからここで少しずつ私が思ったことを、ある時は独り言のように、ある時は日記のように記していきたいと思う。なんでも形から入る人間なので、自分の書く場所を作ってしまおうという魂胆である。どこに何を書いたらいいのかわからないという言い訳はもう通用しない。これで早く追い込まれればいい。

 

また、このタイミングでこのブログを開設したのには、もう一つ理由がある。現在ドイツに暮らして通算3か月が経とうとしている。しかし外国語を使って生活するうちに、日本語で文を書いたときに感じていた、自分の文章がかっちりと決まる感覚がどんどんなくなっているように思うのだ。これを書いている現在も、自分の文章がふわふわと浮いているような感覚に陥っている。これはいけない、一刻も早く書き始めなければと思った。

 

この先、自分が憧れていたように文を書く仕事に就くのかはまだわからない。けれど、書くこと・残すこと・伝えることを、自分の中で大事にしたいという思いは強くなっている。だから、ただやってみたいのだ。

 

これから一年ドイツに滞在する中で、好きなものややりたいこと、もしくは嫌いなことや苦手なことがどんどんアップデートされていくだろう。その経験の中で何を考えて、どんなことに悩み、何をしたのか。後から読んで恥ずかしくなったり、微笑ましく思ったりするような、そんなものをここにたくさんおいて置きたい。

 

これからとりあえず一年。私のささやかな冒険にしばしお付き合いください。